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† 絆 † 〜Andante [絆〜オリジナルストーリー]

※1 通常の企画記事とは全く関係ない話になります。再録でもあります。
   オリジナル小説「絆」はザベルさんを構成した元ネタのお話です。
   興味がありましたら続きをお読み下さい。結構長めです。
   あと、血生臭い&暴力的表現がありますので苦手な方はスルーで!
※2 ブログ用に修正したんですが、それでも長く、読みづらいかも…。
※3 ザベル=リリス ホワイトヴァンパイア=クリス 
   という風に頭で置き換えてお楽しみ下さい。

それは山奥にある、年中雪に覆われた小さな町の話。
その町の言い伝えで、生まれながらに赤き瞳を持つ者は
忌み人“紅き月の末裔”として恐れられていた。
“紅き月の末裔”とは世界最凶と言われるヴァンパイアの子孫の事だ。
赤き瞳を持って生まれた子供は殺されるか、捨てられるか…
どちらにしろ長くは生きられない運命にあった。
事実か否か、言い伝えに過ぎないのにも関わらず。
そしてお話の舞台・町の外れにある小さな教会の前に捨てられた赤ん坊…
この子もやはり忌み子であった。

それでもその教会の神父・ユージュと、
その妻・シスター カレンはその子供を見捨てなかった。
その子供には人としての名前「リリス」と名付け大事に育てた。
しかしリリスの生活は決して平和なものではなかった。
忌まわしき者と町人は怖れ、遠ざけ、毎日の様に陰口をたたいた。
血が滲むような暴力も痛いが、言葉による暴力は
リリスの心をじわじわと痛めつけていた。
それでも彼女は教会の中で純粋な心を持って育った。
自分を大切にしてくれる人たちがいるのを知っているから。
そんな彼女の人生の歯車が大きくねじ曲がったのは
リリスが16歳になった真冬の事だった…。

「ファーザー、シスター!おはよう!!」

元気よく教会の中に駆け込んできたのは町長の孫・クリスだ。
彼はリリスが4歳の頃、教会の中で出会って以来
『親友』として毎日遊びに来る。
クリスはリリスより2歳年上の面倒見の良い少年だ。
目鼻立ちもよく、頭も良いので“次期町長”として期待されてる…
対してリリスは“忌み子”であるが故に学校へは通わせてもらえず
一般の子供よりは知識も学力も劣っていた。
それが更にクリスと並んで歩くことへのコンプレックスとなっていた。
綺麗な長い金髪に妖艶なまでの美しさ、しかし所詮“忌み子”だから。
自分がどんな目に遭っているか、そんな自分に関わって
彼が不幸に成りはしないか、それを怖れているが故に
彼とはいつも自然に話すことは出来なかった。
リリスは雑巾を持ってクリスに背を向けながら掃除を始めた。
しかし彼女の気持ちなどお構いなしにクリスはリリスに駆け寄る。

「おはよう、リリス。」
「…おはよう、クリス。
 祈りが終わったら早々にここを離れて。
 私と接した事が知れたら、あなたの将来に傷がつくから。」

そう言うとリリスはクリスを押しのけて教会の掃除を続ける。
別にクリスが嫌いな訳じゃない。
だけど、自分の所為でクリスが傷つくのが怖い。
現に、ファーザーもシスターも『変わり者』だとか
『異端者』と罵られてるのを知ってる。
それを知ってリリスが家出した回数も半端ではない。
それでもファーザーは何度もリリスを探し出してこう言うのだ。
「君が生まれてきたのは悲しい思いをする為じゃない。
 幸せになる為に生まれてきたのだ。
 私たちはリリスを愛しているよ。」
その言葉を疑う訳ではないが、それでも自分がいる所為で
大事な人が迫害を受けるのは嫌だ。
しかし長い付き合いのクリスは、そんなリリスの気持ちを理解している。
彼女の手に触れて優しく笑う。

「俺は誰に何と言われようと
 リリスに会うのを止めない、絶対。
 だって君はなにも悪いことをしていない。
 誰がなんと言おうとも、君は僕の大切な人なんです。」
そう言ってクリスはリリスの手から雑巾を優しく譲り受け、掃除を始めた。
リリスは困惑した。同時に嬉しくもあった。
クリスはいつもそうだ。私が何度言っても話しかけてくれる…
正直、外に出れば冷たい視線はいつもの事、
殴られたりなじられたりするのは日常茶飯事。
そんなリリスにとってファーザーやシスター、
クリスの存在は素直に有り難いのだ。

「今日も一日平和でありますように…」
幼い頃からかかさなかった祈り。
教会の大聖堂にあるマリア像にその瞬間も切実なほどに祈った。
そう、朝からなんだか不安な気持ちでいっぱいだから。
今日も何事もなければ良いと、そう思っていたのに。


その晩の事。リリスがいつもの様にベッドにはいろうとした瞬間、
嫌な気配がした。なぜそんな気配を感じ取れるかはわからない。
しかし同じくして血生臭いニオイが教会を包み込んだのだ…。
リリスは背筋が凍った…なぜ“血”の臭いを嗅ぎ分けられるのか。
確かに迫害を受け続けたリリスが怪我をしなかった訳ではない。
それでもこの血臭が“凄い量の血の臭い”だと直感で分かるはずがないのに。
リリスは部屋から出て、血臭の立ちこめる場所である“はず”の
大聖堂へと恐る恐る、ゆっくりと歩いていった。


大聖堂ではファーザーが1人の男によって胸を貫かれて絶命していた。
その足下にはシスターが夥しい血を身にまとい倒れていた。
漆黒の長髪…黒い服を着た青年が大好きなファーザーとシスターを殺したのだ。
怖い。
恐怖で一歩も動けないリリスにその男がそっと目を向けた。
「こんばんは、“リリス”…。」
昔聞いた事があるような…懐かしい声であったが、
それよりもこの男は“危険”だ。自分の直感がそう告げる。
恐怖で身動きが出来ないリリスを見て、
不気味な笑みを浮かべた青年はふっと消えた…
その瞬間にファーザーとシスターの身体はマリア像に打ち付つけられた。
マリア像が泣く。2人の血が瞳から流れて…泣いている。
「ファーザー…シスター…。」
無惨に投げ捨てられた2人に向かって歩き出す。
「ファーザー…シスター!」
ここから見ても分かる。もうダメかもしれない。
その2人に触れようとした、その刹那に
彼女にとって第2の悲劇が起こった。

「リリス!!!」
自分を後ろから抱きしめる強い腕。
自分を呼んだ、その声はクリスだ。
そして胸から突き出た腕。これは先ほどファーザーを貫いていた忌まわしい腕。
生温かい血が自分の胸からこぼれる。
「クリス…?」
嫌な予感がする、背中に感じるもう1つの生温かさ。
「クリス…。」
確認するように彼を呼んだ時、2人を貫いていた腕が抜かれた。

ゆっくりと後ろに倒れゆくクリス。
リリスもまた、前のめりに倒れ、吐血をする。
「クリス…。」
3回目の呼びかけにも彼は応えなかった。
後ろを見ると、彼の体からは大量の血が流れつづけていた。
胸に開いた大きな穴は彼の血を止めどなく押し出している。
当のリリスも胸元からの血がおびただしい。
それでも“生きている”自分が恐ろしい。

「いつまで人の振りをする?」
すでに血まみれで顔なんか分からないほどの男が
不敵な笑みで自分たちを見下ろしている。
「人の振り?
 今まで普通に生活していた。血だって欲しがった事はない。
 私は人間よ!」
「人は心臓を潰されればそこに転がる男の様になるんだよ。
 お前は違う。今もその体の中で再生している。
 お前は死なない。お前は私のものだからな。」
「…ちがう、だって痛い。
 今にも……だから違う。
 私は……ちがう!人間よ…!!」
そう言ってリリスはクリスを抱き寄せた。
怖い。誰か、助けて。
そう縋るようにクリスを抱きしめる。
例えクリスがもう動かぬ者であっても、救いを求めた。
しかしその行動が更にその男を悦ばせる行動となった。
両手を高らかに掲げ、リリスを称賛する。

「素晴らしい!
 こういう時に何をすれば仲間を増やせるか
 無意識に分かるものなのだな?」
「なにを言ってるの…」
「お前の血を傷口から吸っているぞ、その男…」
吸っている、訳ではない。
抱き寄せたクリスの傷口に、リリスの胸元から流れる血が
滴り落ちているだけ…
もう何が何だか分からないリリスはその様子を眺めているしかなかった。
本当は、それだけは阻止しなければならなかったのに…。
「血を吸えば仲間が増える?そんな訳はない。
 私達は自ら血を分け与えることで仲間を増やすのさ!」
 それはお前の“絆”となり、未来永劫の従者(パートナー)となる。
 お前は吸血鬼のサラブレッドなのだ、リリス。
 祝おう、お前の誕生を!覚醒した純血種よ、我が血肉と踊れ!!」
血にまみれた男は狂喜しながらその場でふっと消えた。
まるで、夢幻の如く。
その様子をリリスはただ呆然と見ていた。
追うことも、動くことも適わない。
リリスは次第に意識を無くし、クリスを抱えたまま倒れた。



しばらくして、リリスはやけに明るい日差しを感じた。
その違和感に気付いて飛び起きたここは、町が一望できる丘の上だ。

「わたし…?」
「おはよう、リリス。」
その声の主はリリスに膝枕をしていたようだ。
女の子を地面に寝かせるような男ではない。
その紳士な振る舞いは、まちがいなく良く見知ったクリスだ。
だが、今までの彼とはどこか様子が違った。
「クリス…あなた…
 死んでしまったのではなかったの?」
「俺もそう思いました。
 胸を貫かれて、君の後ろ姿を見届けながら
 冥府へと旅だった筈だった。」

そう言ってクリスは胸元をはだけた。
あの時、確かにクリスの胸は自分と一緒にあの男に貫かれて酷い傷跡だった。
そんな傷跡が跡形もなく消えてしまっている。
ふと自分の胸も見てみる。やはり傷跡はない。
「なんで…?」
「“赤き月の末裔”だから、かな。
 …リリスが。」
「ちがう、…知らないっ!
 そんなの知らないよ、クリス!!」
リリスは思わずクリスの口を手で塞いだ。
もう、自分だって気付いている。あの男が言った“意味”を。
クリスは死んだのに生きている。
自分も死んだはずなのに生きているのだから。
小さく震えだしたリリスの手を優しくよけて、
クリスはリリスに微笑みながら続けた。

「俺が気付いたとき、もう朝で…
 2人は助けられなかった。ごめん。」
「……。」
クリスの所為じゃない。“私”の所為だ。
それなのに責めもせず自分を気遣うクリスの優しさが
リリスにはより苦しかった。
「俺はね、吸血鬼の従者になったら
 自我もなくなってリリスの事もわからないと思ったよ。」
「な…んで、へいき…みたいに、笑うのよっ!!」

涙が出た…。
私をかばって死ななかったら彼は普通に人間として将来のある人だった。
なのに私の為に死んで、私の血を受けた所為で『吸血鬼』となった…
その彼がなぜ明るく自分を励ますように笑うのだろう。
「ねぇ、リリス。
 俺は自分の運命に感謝しているんですよ。」
「…?」
「あの夜、教会に行った事を後悔していない。
 あの男からリリスを守りきれなかったけど、
 こうして君と生きる事が生涯叶うことを感謝しています。」
「生涯…って…」
「俺は“忌み人”だろうがリリスと結婚する気でいたから。」
「結婚!?」
「そして、町人に反対されたら駆け落ちするって
 ファーザーとシスターに許可とってたし、ね。
 だから、これで“死ぬまで”一緒だよ、リリス。」
「…ばかだわ…あなた。
 私も、愚かだわ。貴方を手放せないんだもの。」
クリスの事は正直な気持ちを言うと好きでたまらなかった。
だからなおさら、彼の幸せを祈っていたし、彼と一緒にいると幸せだった。
でも普通の幸せはもうとっくに得られるものではなくなった。
もぅ、自分が“死んだ”あの時から、自分の心は決まっていた。
リリスは涙をふき、クリスをじっと見据えて告げた。

「クリス、私はこのまま暮らせるとは思えないわ。
 必ず、あの男を見つけ出して…神父様…いいえ、
 両親の仇を討ちたいの!」
「えぇ、俺もリリスと一緒に行きます。
 あぁ、そういえば迷信だったと思いません?」
「え?」
「吸血鬼(ヴァンパイア)は日の光に弱いって…迷信ですよ。
 俺たちは今何ともないじゃないですか。」
「…そう、ね。クリスと一緒なら…
 どこに行くのも怖くはない。」
「…銀の杭を胸に打ち付けたら小説のように死ぬんでしょうか。
 俺、やってみてもいいですか??」
「だめ!
 絶対そういうこと、試さないでよ!!」
その事件以来、“忌み子”と1人の青年が町から姿を消し、
その町に雪は降らなくなった…。
それから2人の気が遠くなるほどの“断罪の日々”が幕を開ける…。

piki_01.gif


ただ延々とノートに書き綴った話でしたが、自分が思う以上に
長くて、載せる際はちょっとカットしています。
それでもザベルさんとホワイトヴァンパイアの過去のお話ではあります。
前にも載せたんですが、埋もれていってしまっていたので再録しました。
次回はミョルニル登場、そして怪力吸血鬼誕生のお話になります。
その次は以前公開するといって出来ていなかったヴァレリィのお話。
つまりあと2日この手のお話記事になります。
ご興味のない方はご訪問を休むチャンスですよー(笑)
ザベルさんファミリーについて興味がお有りな方は是非ご覧下さい。
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コメント 2

白野ユキ

初めて読ませていただきましたが、
世界観が素晴らしいですね…!
感動致しました;ω;
ヴァンパイアなお話にドキュンです…!
生き長らえた方達、どうなる予定なのかお聞きしたいです。
ザベルさんの過去とつながる?
設定か何かで読めますでしょうか…
また今度散策しに参りますm(__)m
書き込み失礼しましたっ
by 白野ユキ (2009-07-27 20:45) 

ヒヨコ

ザベルさんのヴァンパイアとしての力が覚醒された時はこんなに悲しいエピソードがあったんですね…!;;*
ホワイトヴァンパイアさんもザベルさんが“紅き月の末裔”と充分理解した上で命を懸けてまで愛しい人を守ろうとする…本当に凄いことだと思います;;*
今回のお話も感動して終始ウルウルしちゃいました(ノ_・。)゚.+:。
次回はミョルニル姐様のお話ですねv
きっと私のまだ知らないミョルニル姐様がいっぱい出てくるのでしょうね…ドキドキ///
次の作品も心から楽しみにしておりますv

by ヒヨコ (2009-07-27 22:15) 

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